皆さんは、コーチ、コーチングと聞くと、どんなことを思い浮かべますか?

ゴルフのコーチ、ラグビーのコーチ、サッカーのコーチ、野球のコーチなどスポーツのシーンがすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

私は学生時代ラグビー部に所属してきました。チームには、もちろん監督、コーチがついてくれていました。監督、コーチは、戦略・戦術を考え、それを実現するための技術を教えてくれて、その技術を習得するために練習を行います。そして、監督やコーチは、練習や試合を観て、できていないことや足りないところを指摘してくれました。今、思うとコーチというよりも指導者という感じでしょうか。どちらかというと私自身は受身だったような気がします。

最近のスポーツ界では、選手に何を目指すのか、何のために練習をするのか、こういう場面ではどうするのか、など選手に問いを投げかけ、選手に考えさせるアプローチ、コミュニケーションに変わってきているようです。

このようなコミュニケーションや関わり方はビジネスの世界でも求められてきています。

目次

コーチングとは

あなたは、仕事で課題を抱えたときや、カベにぶちあたったときはどうしていますか?

人と話すことで、頭の中でもやもやしていることがクリアになったり、頭の中で描いていたアイデアが形になっていくというような経験はありませんか?
また、人に話をしながら新しい気づきや閃きがあったという経験はありませんか?

話をするということは、単に情報を伝達するだけでなく、実は、自分が発した言葉に刺激されて、自分が何を考えているのか、どうしたいのかなどを知ることができるのです。

しかし、自分一人では限界があります。
それぞれ、それまで経験・体験してきたこと、価値観、長所や得意な領域など、考え方のクセがあり、どうしても考えやアウトプットが同一的で狭くなってしまいがちです。

コーチングでは、あなたの話を聴き、受け止め、さまざまな角度や視点から問いをするなど対話を通じて、新しい気づきをもたらしたり、視点を増やしたり、考え方や行動の選択肢を増やしていきます。

つまり、コーチングとは相手の目標達成を支援するコミュニケーションです。

ビジネスにおけるコーチングの目的

ビジネスにおいてコーチングを導入する目的には、どんなことがあるでしょうか。

コーチングの導入には、様々な目的があると思います。
マネージャー研修、営業マン研修など企業の研修プログラムなどに用いられ、個人の資質や能力を引き出す社員教育に活用されます。
また、企業の経営者や役員クラスが、経営上のさまざまな戦略を練るためにコーチを雇うケースもあります。

いくつか目的として考えられる具体的な例を挙げてみましょう。

■社員のモチベーションアップを図りたい
■チームワークを強化したい
■社内コミュニケーションを活性化させたい
■組織変革を速やかに進行させたい
■目標を確実に達成したい
■マネージャーのマネジメント力・コミュニケーション力を向上させたい
■マネージャ―とメンバーのコミュニケーションギャップを解消したい
■マネージャ―とメンバーとの面談を有効に機能させたい
■営業マンのコミュニケーション・スキルを向上させたい
■新規事業を立ち上げたい
■企業を成長させたい

コーチングは様々なビジネスシーンで効果的に機能するといえるでしょう。

コーチングの効果

コーチングの効果やメリットとしては、どんなことが考えられるでしょう。

次のような効果やメリットが考えられます。

■その人の考える力を育み、自発性、主体性、応用力などを高める。
■その人の潜在的な可能性や能力を存分に引き出す。
■その人に新たな気付きをもたらし、視点を広げ、考え方や行動の選択肢を増やすなど目標達成に必要な行動を促進する。

ちょっと先の未来のありたい姿に向けて、能力を向上させていく効果があるといえます。時間をかけて、しっかりと対話を繰り返して、じっくりと考え、実行していくことで成果を手に入れやすくなります。
したがって、効果が出るまでに時間がかかります。

逆に緊急性の高いことや、短期間で成果を出さなければいけないことなどは、コーチングは向いていないといえます。

なぜ、ビジネスにおいてコーチングが求められているのでしょうか

 かつて経済が右肩上がりの時代は、とにかくがむしゃらに行動する、または、過去の成功体験や事例を踏襲していけば結果を出すことができました。
したがって、企業においてもトップダウン型のマネジメント、つまり、部下は上司からの指示・命令に従って行動しさえすれば良かったのです。

 しかし、経済が停滞するにしたがって、また経営環境の変化が速くなるにしたがって、それまでの成功事例や成功体験がどんどん通用しなくなってきます。

 そして、先行きについて予測することが困難になり、常に新しい解や適切だと思える解を発見していくためには、ひとり一人が、あるいはチームで、現場の状況や情報に合わせて、柔軟に考え、考えたことをすぐに試してみることが必要になってきました。

もはや、トップダウン型のマネジメントが機能しなくなってきているのです。

それによって、企業内でも指示・命令型ではなく、マネージャーには、メンバーひとり一人の能力やアイデアを引き出して、チャレンジ、実践させるコミュニケーションが求められるようになってきたのです。

また、世代によって生活環境や教育環境も変化し、多様性が進むにつれて、企業で働く人たちの価値観も多様化してきました。
ただ出世すればいいというのではなく、その本人の価値観と、企業の価値観やゴールをリンクさせることが、より重要視されるようになってきたのです。

そこで、マネージャーの仕事は、業績目標の達成とともに、部下を管理するのではなく、部下を育成、成長させるということが重要なミッションになってきました。

もはや、従来の画一的な教育やマネジメントでは、企業が成長していくために求める人材を創出するのは難しくなってきています。
けっして、今までのやり方や考え方が間違っているわけではありませんが、状況や環境の変化に対し、できるだけ速やかに柔軟に対応できるマネジメントやコミュニケーションが求められているのです。

企業においては、上司がコーチ役となり、部下の持っている個人の価値観を認め、考えや気付きを引き出し、背中を押して行動を促進させることができれば、部下の自発的、主体的な行動を生み、企業の業績向上に結び付いていきます。

そのためには、コミュニケーションの質と量を変えていく必要があります。
そこにコーチングスキルがビジネスの世界で活かされていくといえます。

コーチングが活かされるテーマとは

コーチングで扱うテーマで最も効果的なのは、重要ではあるが、緊急ではない事柄です。

仕事や人生にビジョンや目標をもって、そこに向かって戦略を持ち、仮設を立てて、実践し、実践することで経験や知識を蓄積し、その経験や知識を次の行動に活かしていくプロセスを繰り返していくと、人は成長していみます。
このプロセスの中で、「目標を設定する」「現状を把握する」「目標とのギャップを明確にする」「目標達成のためのアクションを考える」「行動を起こして、振り返りとフィードバックを行う」というようなアプローチでコーチングは効果を発揮します。

目標をもって、そこに向かっていくということは、仕事や人生にとってとっても重要なテーマなのですが、ある程度時間をかけて取り組まなければなりません。

しかし、とっても重要なのですが、緊急性もなく、時間もかかるので、なかなか手を付けられず、放置されやすいテーマともいえます。
また、自分一人でこのプロセスを回していくのも、なかなか難しいものですが、コーチをつけることで、一緒に目標に向かって進んでいくことができます。

コーチングはどのように行われていくのでしょうか

コーチングでは、答えは相手の中にあるという姿勢で、相手の可能性、潜在能力を信じて、相手に考えさせ、相手から答えを導いていきます。
そのためには、次のようなことを行っていきます。

■相手が本音で話せるような信頼関係を築く
■目の前の相手に意識を集中し、最後まで傾聴する
■相手の良い点に注目して承認する
■相手の行動を良く観察し、気づいた点をフィードバックする
■相手の新たな気づきを促すために効果的な質問をする
■具体的な行動を起こすように、相手のコミットメントを引き出す


コーチングを効果的に進めていくために

コーチングを効果的に進めていくためには次の3つのことが重要です。

コーチとコーチングを受ける人は、双方向に対話をする

コーチングの基本は、コーチとコーチングを受ける人との間でおこなわれる対話です。

対話とは、二人がお互いに向かい合って話すことであり、「目標」や「意味」が共有されていることが重要です。
つまり、コーチとコーチングを受ける人は、対等のパートナーとして、目標に向かって、お互いに「話す」と「聞く」の両方の役割を担っているということです。

コーチはコーチングを受ける人ごとに対応する

人はひとり一人、価値観、考え方、行動パターン、もののとらえ方、情報処理の仕方などは異なりますから、コーチングをする人は、相手の独自性をいち早く把握し、その人に最も適した方法で関わります。

成果が出るまで継続的に行う

コーチングで最も効果的なテーマは、『重要ではあるが、緊急ではないこと』ですので、コーチングでは、成果が出るまで一定の時間がかかります。

最初に目標設定やその実現に向けた戦略やプランを練りますが、行動をしていく上では、必ず誤差やギャップが生まれます。
その誤差やギャップをお互いにリアルタイムに確認し、修正していくために、継続的に多くのコミュニケーションを重ねる必要があります。